QEDの山歩き

山歩きの記録・メモ・雑感

地獄棚・雨棚見物と、マスキ嵐沢・鬼石沢再訪

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鬼石沢へ行ったことのある方はご存じと思うが、一軒屋避難小屋から入渓すると最初の滝がF2となっている。F1は?と言うと、避難小屋よりも下流に雨棚という大きな滝となって落ちており、これがF1(写真右)である。鬼石沢へ行くたびに「そのうち雨棚を見に行こう」と思うのだが、思うだけでサッパリ実現しない。色々と行きたい場所がある時はなかなか「見物」のためだけに時間を割くのは難しいものである。ならば、リハビリ期間中の今が最適なのではないか?そう思って見物に出かけた。しかし、根が貧乏性なので見物だけってのはどうももったいない気がして、見物ついでに、以前行った沢を久しぶりに訪れてみることにした。

【滝見物】

雨棚を見に行くには、堰堤の上で大滝沢とマスキ嵐沢が合流しているあたりへ登山道からはずれて降りる。今日はこの堰堤の場所を2つほど下の堰堤と間違って降りてしまって、20分以上ムダにしてしまった。全く恥ずかしい。降りる場所は全然難しくなくて、2つの沢が合流しているのを登山道から確認できたら降りれば良い。しっかり踏み跡がついていて問題無く沢に下りられる。
沢を進むと堰堤が現れるが、ロープのついている左岸側から越えられる。
雨棚へ向かう途中、沖箱根沢と地獄棚沢の大滝も見物する予定だったのに、先の方を眺めて歩いていたら沖箱根沢の出合を過ぎてしまった。朝から失敗ばかりである。
樹林に覆われた沢を進んで行くと、正面前方に突如として大きな滝が現れる。これが地獄棚である。語彙貧困で、「すごい」としか形容できない。これは一見の価値あり、是非見物をオススメしたい。

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沢はここで右にほぼ直角に折れていて、雨棚はこの先にあるのでそちらへ進む。途中、5mほどの滝(写真右下)があり、右側から容易に登れる。この滝を超えるとすぐに雨棚が現れる。

(左下の写真は地獄棚基部から右手を見たところ。鬼石沢出合と呼ぶべきか)

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雨棚は筋状に落ちているので地獄棚よりは見栄えはしないかもしれないが、高さはたいしたものである。想像していたよりは寝ているように感じたが、登れる気はしない。

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5mの滝は降りるのもたぶん難しくないと思うが、「ロープを出した方が良い」と書かれた記録を見たこともあり、今日は初めてだし右手首は痛いしリハビリ中だし、ということでロープで確保しつつおりた。左岸側にロープで作られた懸垂支点があるが、全体重を預けるにはちょっと頼りなさそうに見える。

帰りは沖箱根沢の出合を見逃さないよう気をつけて歩き、出合からすぐの所にある20m滝を見物した。きれいな滝だと思うが、地獄棚・雨棚を見た直後では迫力に欠ける。3つの滝を同日に見物する場合はまず最初に沖箱根沢のF1を見るべきであろう。

箱根屋沢の出合に沢ガニがいた。丹沢で沢ガニを見るのはとても久しぶりだ。
ここまでですでにかなりの満足感である。

【マスキ沢】
マスキ嵐沢の入渓点まではすぐなので、「まあ折角だから」と思って寄ってみることにした。この沢に来るのは何年ぶりだろうか。途中のいくつかの滝と最後の涸棚以外の記憶が無い。出合では10名ほどのパーティが入渓準備をしていた。こちらはすでに沢装備となっているので挨拶をして横を通り過ぎる。

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久しぶりに歩いてみると、ナメ床が多く、容易に登れる小滝がいくつもあり、心が癒やされる沢であると感じた。今年になってから行った北丹沢の沢の岩はかなりヌメっていたので、ニシタンはどうだろうか?と少し気になっていたのだが、どの岩もおおむねフリクションは良く効いて、マスキ嵐沢の一番大きな滝(写真右)も問題無く登れた。

 

左下の写真はマスキ嵐沢にある有名な石。右下の写真は大滝の途中から撮影したものだが、明暗の差が大きくて分かりにくいものになってしまった。

 

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大滝を越えたあとも容易に登れる小滝が続いて現れるので楽しめる。水温も水と戯れるにはちょうど良い感じである。ナメと小滝を楽しんでいると徐々に水量が減ってきて、標高880mあたりで顕著な二俣となる。ケルンが積まれている右俣が本流である。

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去年、下棚沢を登った帰りに間違って踏み込みそうになった「鬼石沢左岸尾根」というのが気になっていたので、今回は本流ではなく左俣へ進み、適当な所からこの尾根に上がることにしていた。涸棚は右俣へ進んだ後で出現するので、残念ながら今日は涸棚で遊べない。

左俣へ進んだあと、地形図上で狙っていた場所に出られはしたのだが、詰めの斜面が悪くて少し苦戦した。この尾根に上がれそうな沢形が他にいくつもあったので、もっと容易に上がれる場所がありそうな気がする。

【鬼石沢左岸尾根】
今日は標高960mあたりから下側を歩いたことになる。とても歩き易い尾根だったので、「これはオススメだな」と思いながら下っていたのだが、尾根末端が近づいたあたりでしっかりした踏み跡を見失い、登山道に出るまでの傾斜が急でここも少し苦戦してしまった。たぶん、容易に下りられる経路があるのだと思う。

右下の写真は避難小屋そばの橋が見えたところ。立木伝いに降りられるが、もう少し傾斜がゆるいと有り難い。

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【鬼石沢】
尾根を降りた場所は避難小屋下にある渡渉用の橋のところだったので、そのまま鬼石沢を歩き始める。
すぐにF2が現れる。3日前の水曜日に結構な雨(丹沢湖アメダスで96ミリ)が降ったので、実はもっと水量が多いと思っていたのだが、それまでが極端に少なかったらしいので大地にかなり吸い取られてしまったのか。

(写真左:F2、写真右:F3)

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それはともかく、岩がヌメってさえいなければF2,F3ともに登るのは容易である。F3を過ぎるとすぐに水が消えてしまってつまらないゴーロ歩きとなった。「もっと面白い沢だったはずだが・・・」と思いながら進むと再び水が復活し、記憶にあったきれいな沢歩きとなった。

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そして鬼石出現(写真左下)。水量が多いときは鬼石と左壁の間を水がジャージャーと流れているのだが、今日は全く水が流れていない。初めて来たとき、鬼石の穴(写真右下)をくぐって抜けようとしたのだがどうにも窮屈で抜けられず諦め、過去全て右側から巻いていた。今日覗いて見るとそんなに窮屈でも無さそうに思えたので穴の中を進んでみたが、やはり抜けられるとは思えず、結局右から巻いてしまった。ちょっとだけ悔しい。

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今日はこのまま沢を詰めずに、適当な所から尾根に上がる予定である。地形図を見ると、鬼石のあたりでは右岸尾根に登れそうに見えるのだが、実際は切り立った崖や急斜面となっている。ご存じの方も多いと思うが、実は国土地理院の地形図には間違いが結構あるらしい。先日行った神ノ川水系・金山谷の出合も地形図ではゆるやかな斜面となっているが実際は崖である。で、15年9月に「間違ってるよ」と国土地理院に伝えたら「速やかに当該箇所のデータの修正作業を実施し、更新データが整い次第、地理院地図等で公開させていただきます」という返事が15年10月に来たのだが、2年近く経過してもまだ更新はされていない。
それはともかく、斜面を眺めながら沢を進むと登れそうに見える傾斜となってきたので(写真左下)、そこから尾根に上がることにした。適当なところから登り始めたらすぐに作業道が現れ(写真右下)、それがずーっと上まで続いていた。結局この作業道は登山道まで続いていたので、グズグズの斜面やヤブこぎで苦労せずに済んだ。鬼石沢のエスケープルートとして使えると思う。

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この作業道を歩いているとき、登山道まであと15分くらいのあたりで熊を見た。ニシタンで熊を見たという話・記録は時々見聞きすることがあったが、実際に見たのは今日が初めてである。斜面の下の方から動物が走るような音が聞こえてきたのでそちらに目をやると、熊さんが軽快に斜面を下って行った。見えていたのは数秒で、残念ながらカメラを出す暇もなかった。

最初の予定では屏風岩山経由での下山を考えていたのだが、予定よりも時間がかかってしまったし、なによりもすでにお腹一杯になっていたので、平凡に大滝峠上から東海自然歩道経由で下山した。

【今回のルート】

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